単行本感想

警察学校編/ゼロの日常1〜4巻

警察学校編<上下巻>感想

松田について

松田のキャラが意外でした。

当時(昔)と違う見た目(髪型)も相まってか、快斗っぽいです。

以前は気難しい、クールでとっつきにくいという印象を持っていました。

「揺れる警視庁」が好きだともしかしたら賛否が分かれるかもしれません。

「萩原だけは古い付き合いだから態度が違う」という認識でしたが、3年前は単に大人になっただけなんでしょうか。

ちょっとキザ、クール要素はまるでなかったので「昔はこうだったんだ」という見方もあるとは思いますが、懐かしさが感じられなくて違和感があったという感想が率直なところです。

萩原について

主にテレビアニメがベースということもあってか、一番イメージが変わっていません。

しかし、早逝なだけあって改めて描写されると残念な感じについて指摘されるのは否めないです。

伊達刑事を佐藤刑事の一年先輩にしてしまった時点で高卒設定は都合悪くなっているので仕方ないのかな。

まあ、安室と同期という時点でそこは動かせないのですが。

伊達について

なんとなく刑事になってからナタリーさんと出会ったのかと思っていたので、交際期間が長かったのは意外でした。

あと、原作(76巻)で受けた印象より結構繊細でとても優しい人だった。

萩原は雰囲気的に優男感あって声のイメージもあったし、漫画でほとんど描かれていなくても意外な感が全くなかったのですが、WPSの伊達さんはいい意味でギャップを感じました。

「班長」というだけあってかなり真面目でしっかりした人物として描かれています。

76巻だと、お茶目というか気の良い「ますらお」的な印象だったのですが、もうちょっと深かった。

降谷について

持っているスキルが仲間たちからの影響とは思ってもみなかったです。

設定的にはどうしても後付けでそうなったとは思いますが。

冷静、慎重で抜け目ないところは根っからでしょうか。

しかし、本編での伊達の評と微妙に異なるのが気になりました。

「伊達視点だとそうは見えなかったのか」と思えなくもないですが「自分の力を過信している」というのはバーボンとしての顔に近いです。

降谷としては割と己を出したがらないように見えます(特に警察学校編の中では。例:コンビニ強盗事件)

あと、詳しくはないですが、公安設定にするにも安室の設定は結構無理があるような気がしないでもないですね。

安室の立場は本来作業班というものだとは思いますが、配属時期は現実的に可能な範囲なのでしょうか。

少なくとも4年は潜っていますし、成績優秀者だとすぐに声が掛かるのでしょうか。

だとすれば伊達刑事には表向き速攻「警察官やめた!」って言ってたら笑ってしまいます。

警察学校編からのノリだととても信じられないはず……。

警察外部ならともかく、内部の人に○○で○○だよ~と言ってもごまかしづらそうです。

うっすらと気づいていて、どこに潜っているかすらわからないから伊達はあんな反応だったのでしょうか。

「自分の力を過信してどこかで命を落としてるかも」というのは普通の職ではなかなか思いつきませんし。

高明は景光について薄々気づいていたくらいなので、オープンにしなくても同業(警察官)ならわかるのかもしれません。

答えが返ってこないとわかっていながら「元気にしてるか? 気にかけてるぞ」という意味でメールを送ったのでしょうか。

あらためて考えたらそうとしか思えないですが(連載当時は安室が公安なんだろう、降谷零という名前なんだろうという予想しかできませんでした)温かいような切ないような。

景光について

好人物な上に降谷と仲が良いのを見てるとやりきれないですね。

どうにも切なくなってきます。

状況の割に高明が妙に冷静なのがちょっと気になりました。

ストーリー

「ほどほどに楽しめたかな」というのが率直な感想です。

話数かけてボリューム欲しかったのと単純にコナン本編と違って特別気に入ったストーリーや場面がありませんでした。

可もなく不可もなく、といったところです。

映画並に無茶やってるカーアクションはアニメならまだいいですが漫画では微妙かな。

たくさんのキャラが出てくるスピンオフ且つ短くまとめているので敢えてそうしたのかもしれませんが、原作だとアクションシーンはアングル含め動きが強めに感じられるのですが、普段よりあっさり目といった普段との差があったからかもしれません。

原作者コメントによると、松田を登場させるために「純黒の悪夢」の制作過程で安室と同期設定にしたという経緯で「警察学校編」が作られています。

描くネタが本編またはゼロの日常に振り分けられているからなのか降谷個人のエピソードはありません。

そのため依然として謎めいています。

景光が気になるという方にはつらい設定も盛り込まれていますが、人間性もわかる作品なので「買い」だと思います。

拳銃

劇場版にあった「小五郎の拳銃の腕がいい」という設定の逆輸入は嬉しいですね。

質問コーナーなど

「なるほど」と思うところもあれば、ページの穴埋めかなと思うところも。

応募者全員サービスという名の受注販売のネームを掲載していましたし、1冊にまとめられなかったのは大人の事情かと考えてしまいました。

企画が持ち上がって原作者で描きたかったところを入院後の都合で著者にお願いした次第らしいので仕方ないところもあるとはいえ、万人が納得できるような商売をしてほしいですね。

コレクション目的で購入するとは限らないようなので、単行本に収録されると明確にするのがベターだったのではないかと思いました。

自分はいつも全サはスルーしているので単行本収録はラッキーだと思ったのですが、購入した方がちょっとショックを受けるのは無理もないです。

価格が全然違いますしね。

せっかく描いたので広く見てもらうという趣旨だとすれば理解はできるのですが、話数や刊行ペース的に収録されることはわかっていたはずでは?という疑念も。

ゼロの日常<1〜4巻>感想

ストーリー

1話完結のショートストーリーで王道でもあり、読みやすいです。

当初、コナンと同時掲載時に読んだり読まなかったりしていたのですが、ボリュームを考えると単行本でまとめて読む方が楽しめると思います。

しかし、原作を読んだことがなかったりテレビアニメや映画をほとんど見たことがなかったりする場合、背景がわからないので物足りなく感じるのではないでしょうか。

ゼロの日常はコナン原作者と編集者とゼロティ作者で打ち合わせの上、制作されているようです。

そのため単行本を読まないとわかりづらいと思うのですが、コナン原作者が原案の話とそうではない話が混在しています。

コナン原作者が場合によって必要箇所(セリフなど)は修正を加えることもあり、巻末には一部ですが採用前のネームが紹介されています。

コナン原作者のプロットは初見で「えっ?」と思うような場面が割合として多いので、単行本必読だと思います。

サンデーを読んで戸惑った場合は是非確認してください。

一例を出すと、夢の話はコナン原作者プロットです。

個人的には「急に少女漫画始まった??」「オタクっぽい」「みんなの梓さんが」と内心焦ったのですが、コナン原作者プロットだと思うとオタク感は納得でした。

結構ネタに振り切ったパラレルワールドの漫画だと割り切って読むといいかと思います。

敢えて夢という形で登場人物の性格も変えたのは実験的というか、SDB(90+)の質問コーナーでこの二人について発展があるかどうかの質問があったからおそらくサービス精神で描かれたのかなと思いました(単なる推測です)

原作を含め、普段の作中だと明らかにこの二人には互いに対する関心が薄いという描写が一貫しています。

安室にとっては捜査に必要な潜入先で都合がよく、梓さんにとっては同僚で、いたら業務的には助かるが体調崩して早退したり休んだり、掴みどころはないものの人気者だしポアロのために(無限ループ)という感じですかね。

ゼロティだと二人は原作とは別人っぽいのでこちらはゆるいノリだと思います。

メタ的にいうと、原作ではストーリーを動かすための二人の役割があるので、そういう制約がないお遊びシーンが入れられるこちらはおまけみたいな感じ。

キャラクターについて

本編に出る機会のないキャラも出てくるので懐かしくて楽しめます。

原作に逆輸入された当初より風見の使い方が面白い(※コミカルという意味で)と思いました。

本編でミスすると洒落にならないのもあってか使い勝手はスピンオフの方がちょうど良さそうです。

特に救助とゲームのオチは笑いました。

「ですよねー」と。

普通っぽい風見視点がいい感じに話を回しています。

過去のエピソード

自転車の練習の回想シーンは少し意外でした。

家族はいるのかもしれませんが、赤の他人に練習に付き合ってもらうことはありえるのでしょうか。

ゲストキャラの男の子のように頼み込んだのかと思いました。

普通は好意のある相手に世話になるのは嫌がりそうな気が。

あと「年齢設定忘れているのか?」と疑問が湧きました。

個人差はあるでしょうが、年齢的にはとっくに自転車乗れていると思います。

原作者が明美さんと同い年くらいの感覚を持っていそうですが「こちらが忘れてるのか?」とよくわからなくなってきました。

釣りの回の景光とのカットは今はもう故人と思うと切ないですね。

扉絵

(扉絵だけではないですが)原作で出てくる服装もあったりしてなかなか興味深い。

原作を読んでいると、時系列的に大体このあたりの話なんだなというのが服装でわかるのが面白いです。

逆に原作を読んだことがないと、話が好みに合わない場合は相当退屈かもしれません。

SASUKEみたいなことをやる回の表紙のヨーコちゃんが可愛くて好きです。

コナン本編の屋根裏部屋の話でも思ったのですが、髪型とかヨーコちゃんは時代が変わっても廃れないデザインだと思います。

カット

話と話の間にゼロティ本編に関係したおまけカットがあります。

漫画の単行本でよくあるやつですが、コナン本編にはそういったものはないのでその点ゼロティならでは(※警察学校編にもあります)のお楽しみ要素です。

安室について

(警察学校編の質問コーナーによると)「家庭環境的に外国語が話せる」ことやコナン本編でわかる通り、日本生まれ日本育ちのハーフであることを踏まえると、安室の父親か母親が特派員か何かだったのか。

苗字が日本の名前でもあるのでどちらかは日本育ちの日本人なのかな。

それか当て字のようには思えませんが、元の名前から帰化にあたり改名しているのか(メタ部分はともかく)

まあ「気が向いたら描く」レベルなので気にするだけ無駄なんですが。

その他

結構賛否が分かれる作品のようですね。

どこからどこまでを許容するか個人によりけりなので、微妙な反応もわかります。

実際、本誌で連載始まった当初は数話まで読んで「別に読んでも読まなくてもどちらでもいいか……」(※連載開始〜途中までは原作と同時掲載でした)と思っていた口だったので。

単行本の表紙やおおまかな説明で作風はわかりそうな気もしますが、掲載時の宣伝はどうだったかな。

まあ、大した期待もなく読み始めたところもあるので純単行本派の方の感覚まではわかりませんが。

コナンは原作とメディアミックスされたテレビアニメ(映画含む)もあって、作品に触れる側のキャラクター観が多少なりとも分かれると思われます(作り手が一人ではないのと自由度の高いスピンオフという立ち位置のため)

ただ、人によってはというか映画から入った方で不満を持つ場合、根本的な誤解がありそうですが、あくまで映画(執行人)の安室(降谷)のキャラ付けは脚本の影響によるものであり、原作とはほぼリンクしていません。

共通していそうなイメージとしては「孤独がいい」「ヒマはない」という点くらい。

原作は詳しく描かない(描く必要がない)ことによってミステリアスに見えるだけだと思います。

この誤解があるためにギャップが大きいのだろうと。

他にもコナン以外の原作者の作品を読んだことがあるかないかでも印象が異なると思います。

コナンの作風が異例なのではないかと。どちらかといえば原作者さんはコメディー寄りの作風だったはず。(コナンやまじっく快斗以外だと)YAIBAや4番サードを読んだのはかなり前なので細かいところは忘れてしまっていますが。コナン原作もミステリー部分除けばラブ・コメですしね。

枝葉のことですが、率直に言うとキャラ設定的に犬を飼うかどうかはともかく(読み始めたら作風はすぐにわかったので)犬の名前をパロディにするのはやめてほしかったなーと思いました。

日本を強調する意味にしても、わざわざ音階からとっていましたが、そこまでするのなら原作に出てきた三郎とかそういった和名でもよかったのでは。

犬は可愛いしエピソード自体は好きなんですが、名前は呼びたくない。

個人としてはコナンの方を先に触れていて、それとは別として元ネタ作品の方に興味を持って見たのは後のことですが元ネタの方に対してもそれなりに思い入れがあるので、オマージュという体で色々とやられると冷めるところがあります。

原作だと大勢の人物キャラクター名前の付け方くらいは色々と考えるのが大変だからと思って気づいた時は笑い話にはしていましたが、内輪ネタは正直笑えないなと思うこともあります。

片方しか知らなかったら大して気にならないとは思うのですが、どちらも作品ファンだと複雑ですね。嬉しくはない。関連性ないですしね(それが一番の理由)

あとは栗山さんが別人に見える。

容姿も中身もあまり似ていない。

かろうじて名前が紹介されていて、髪型でなんとか判別できるかな?という感じ。

映画から登場したキャラクターで、原作にも逆輸入されましたが、映画やアニメオリジナルの九条検事シリーズが好きなため、別人感でしっくりこない。

嫌いではないのですが「誰?」という感じ。

そして、個人的な感想ですが、安室が基本的に女性キャラクターを下の名前で呼ぶことが多いためか、いつの間にか愛称が「緑さん」になっているのもなんか受け入れがたい。

自分の中では「栗山さん」のままなのでなんだかなという感じ。

妃先生(英理)もアニメの場合、回によっては一度くらいそう読んでいたかもしれませんが、大体「栗山さん」呼びだったような……。

出番的に段々ゼロの日常の栗山さんが(有名な作品だと世間的な印象で)上書きされていきそうで、それがちょっと不安。

栗山さんは映画もテレビアニメも優秀でお茶目な大人の女性というイメージが強いので、ゼロティ内では最もパロディ色が一番強いと思います(作品も硬い内容ではないため)

安室、梓さん、風見は別にどっちでもいいかな。

原作、警察学校編、映画含むTVアニオリでも回により雰囲気変わるタイプなので、そこは別に割り切れる。

だからこそゼロティを読めたのかもしれません。逆に「コレ」というこだわりのある方には軽々とおすすめできない作品かもしれないです。

梓さんに関しては原作だと事件の謎を解くという意味で有能店員然としているところが好きなため、そういう意味ではゼロティより原作の方が回によって「思っていたのと違う」と思うこともあるかな。

ゼロティの梓さんは元々ヒント要員でもないため、ゼロティ内では差異がなく一貫的で、どうにでも好きにしてくださいといった感じ。

個人的にゼロティ内なら話の好みはどちらかというとゼロティ作者さんの方が好きです。

読みやすいですし、一読者としては見たいものを平均的に描かれているという印象。

原作者側に関しては普段描けないものを実験的に描かれているような印象です。

普段は主人公のコナンが中心ですし、映画と同様に日頃はなかなか描けない部分があるのかと思いました。

そう考えると、原作はよく練られているんだろうなと。それかコナンがもう自然に動く感じなのかはわかりませんが。

原作だと基本的には事件ものですし、ページも限られているから無駄は結構削ぎ落とされていると思います。

普段の名探偵コナンのノリ、またはハードなノリを求めている方にはおすすめできない作品かもしれないなというのが率直な感想です。割とゆるいコメディなので。

ただ、原作が好きでこのスピンオフがどのあたりの話に挟まれているのか気になるという場合は面白いと思います。キャラクターの服装でそのあたりを確認するのが楽しいです。