感想
導入部分について
これまで組織を捕まえるためにコナンが動いていたことがある意味実を結んでいるとも言えるのですが、灰原の思い過ごしではなく、確実に組織の手が迫っています。
写真
どういう状況だったのかわかりませんが、男性が小6の冬休みに見せられたということは日頃持ち歩いていたか、あるいは卒業アルバムで使うために気に入った写真を家から持ってきたのではないでしょうか。
灰原が明美の背に隠れるように写っているので見慣れない相手、組織に雇われたシッターが写真を撮っていたのかもしれません。
組織の命令でよく転校させられていたということは、明美の世話をしていた人物も頻繁に変わっていたと考えられます。
明美は帝丹小学校にいつ転校してきたんでしょうか。
回想の服装からみると、春からなのかな。
若狭の認識
明美の同級生の話を聞いていた若狭が灰原の正体に気づきかけています。
しかし「まさかね…」と思っているので確信には至っていません。
今回、若狭が宮野エレーナのことを知っていると判明しました。
「あの毒薬の研究を引き継ぎ、そして組織を裏切ったヘルエンジェルの娘…この子が…!?」と若狭は灰原を見つめながら考えています。
ヘルエンジェル、つまり宮野エレーナを知っているからこそ「宮野明美」と「宮野志保」の名前を聞いて思い至ったことになります。
江戸川コナンが工藤新一と同一人物であることに気づいていると思われる若狭が灰原については確信に至らないということは、幼少期の灰原の顔を知らないことがより強化されます。
しかも名前は知っていて顔を知らないということは改めて、若狭が組織の一員ではないことがほぼ確定したのではないでしょうか(若狭が組織の一員でないことに関して詳しくは後述※)
そして、組織を裏切ったのは灰原だけではなく、宮野エレーナもだったことがほぼ確定したと思われます。
42巻でベルモットは「恨むのならこんな愚かな研究を引き継いだ貴方の両親を」と言っています。
78巻の
- 灰原に残されたカセットテープの内容「今とても恐ろしい薬を作っている」「願いを込めてシルバーブレット『銀の弾丸』と呼んでいる」でもわかるように、組織の研究に対してエレーナ(宮野夫妻)には対立感情があったことが窺えます。
- バーボンはエレーナとシェリーを「よく似てらっしゃる」と評していました。
96巻の灰原の発言によると「30年前に薬の開発チームの一員として宮野厚司が『白鳩製薬』で働いていた」ことが判明しています。
白鳩製薬は安くてよく効く薬を売っていた大企業でしたが、もっと大きなグループ(=烏丸グループ)が買収しようとしてうまくいかず、25年前に倒産しています。
95巻では町医者(開業医)になった宮野厚司が烏丸グループがスポンサーになっている研究施設に何度も誘われていたことが判明しました。
宮野厚司は「夫婦離れ離れになるのがつらい」と考えており、烏丸グループについてメアリーから「少し胡散臭い」と言われたことや「悪い噂も聞いている」ことにも触れて難色を示しています。
「また学会でマッドサイエンティストと叩かれるのも何だし」と断ろうとしていました。
この時、エレーナは第二子(=宮野志保)を妊娠中で「給料がいいなら病院を畳んで研究を手伝う」「町医者の片手間にできる研究ではない」「あなたの夢なんだからそう簡単に諦めないで」と応援し、家族が一人増えるということで厚司ももう一度前向きに考えてみることにします。
若狭が宮野エレーナの名前を知りながら敢えて「ヘルエンジェル」と呼んでいる描写なのは「組織を裏切った」ことによって「ヘルエンジェル」と呼ばれるようになったからではないでしょうか。
若狭は宮野エレーナが組織で「ヘルエンジェル」と呼ばれ「組織を裏切った」と認識しているので17年前〜19年前の間の組織について調査していたことがわかります。
何らかの組織に属する諜報員(現在は個人で活動している可能性もありますが)である可能性が高まりました。
ただし、若狭の年齢的に個人で相当な年月を遡って諜報活動していたというのは考えにくいです。
尚、「組織を裏切った」が宮野志保を指していると仮定した場合、江戸川コナン=工藤新一に気づいていながら灰原哀=宮野志保について確信を持てないことと繋がりません。
若狭の持つリストには工藤新一「死亡」と書かれていて、それを覆すだけの確信が持てたから帝丹小学校に勤務しているわけです。
つまり、宮野志保が裏切ったと知っていれば幼少期の顔を知っていて、幼児化にはすぐに辿り着くのが自然。
灰原=宮野志保と確信が持てない時点で、宮野志保が科学者であることを知らない可能性が高いです。
若狭が元組織員ではないと考えられる理由
①若狭は宮野志保がヘルエンジェル(宮野エレーナ)の娘であると知っているのにもかかわらず、幼少期の顔(灰原哀と同じ)を知らない。
初登場回からコナンに推理力があることを確かめている様子からみても、若狭は江戸川コナン=工藤新一だと気づいていると思われます。
しかし、これまで灰原哀=宮野志保だと考えたことすらなかったことが今回で確定しました。
②灰原は初対面の時に若狭を無警戒だった。
初登場回で灰原は若狭のことを全く警戒していませんでした。
初めて例の「ドックン」という「組織の匂い」を感じたのがキャンプ場で若狭が「義眼」という言葉に反応を示したと思われる時。
間接的ですが、ラムへの殺意を感じ取ったのが組織の匂いだったと考えられます。
灰原は10億円強奪事件を起こす前の姉(明美)に対してすら匂いを感じ取っていました。
組織の匂いとは、灰原本人が「危険を察知する唯一の感覚」と言っている通り、悪い予感、危機感のこと。
「組織にいた者だけが発する」という説明があるので紛らわしいですが、過去の組織の潜入者に感じることからも、間接的にすら不安を感じさせる第六感であることが若狭への反応と似通っています。
ちなみに灰原は黒田に対しては「顔が怖い」程度の認識なので、義眼や片目が見えないこと自体を組織(ラム)と結びつけているわけではないとわかります。
一方、若狭に対しては「この人、右目が見えてない!?」と、組織の匂いを感じた後に歩美が視界に入っていなかった様子から、若狭の右目が見えていないことにようやく気がつきました。
「組織の匂い」とは意思ではなく、本能的に感じ取れるもの。
そのため、油断している時に気づかなかったというのも納得できます。
「組織にいた者だけが発する」と言う割に何も感じなかった沼淵や神社にいた時の妊婦に扮していたベルモットはその時灰原に対する殺意がなかったために、危機感を抱く理由がありませんでした。
つまり、灰原の本能は正しく働いていることになります。
「組織にいた者だけが発する」というのはものの例えだと捉えた方が自然。
物心つく前から組織の管理下に置かれていたので、外部の人間との接触が少ないであろう灰原にとって感覚的な例えだと考えるとしっくりきます。
気になる点を強いて挙げるとすれば、杯戸シティホテルにいた時はクリス=ベルモットとは知らなかったのか?ということくらいです。
ベルモットという名前や変装の達人であることは知っていたのにジンやウォッカと違って女優としての顔は知らなかったのかもしれません。
ちなみに調書が盗まれた後の話では何とも言えないような。
枡山がピスコであったことに薄々そうじゃないかと思っていたが、その時ベルモットの強烈なオーラも感じ取っていて確信が持てなかったという発言を踏まえると、女優であることは知らなかったものの、変装の達人であったことは知っていたのでバスジャック事件の時は「やっぱり組織の人間?」と感じていたのかもしれません。
また、帝丹高校の校医で帝丹小内科検診の担当医でもあった新出に扮したベルモットを避けた(当日休んだ)のは偶然ではなかったのかもしれません。新出が何度か学校に出入りしていた場合、その気配に灰原が気がついていた可能性は十分考えられます。
③灰原は浅香の名前に心当たりがなかったのに、羽田浩司殺害事件の詳細をコナンから聞いて組織の人間だったのかもしれないと推測を立てていた。
若狭=浅香という前提にはなりますが、浅香が元組織員で17年も組織から追われている身なのであれば、灰原の耳に入らないというのは不自然ではないでしょうか。
もしも若狭=浅香=組織の人間であった場合、若狭の戦闘能力やコナンすら上回る推理力からみて、コードネームを与えられてもおかしくありません。
そうなると、ベルモットの言っていた組織内の鼠として挙げられたのが3人だけで浅香の名前がなかったことと矛盾します。
波土について調べる時もベルモットとバーボンは「アサカ」について詳しく触れておらず、あくまで組織の命を受けたという印象です。
さすがにコードネーム持ちの人間が17年間も組織から逃げおおせたら組織内ではかなり噂になるのではないでしょうか。
灰原(シェリー)はコードネーム持ちですが、実行部隊とは関係ないのに共に行動したことのあるジンやウォッカ以外の、ピスコ、ベルモット、キャンティ、コルンといったコードネーム持ちの存在を少なからず把握しています。
沼淵のような裏切り者は除外して、組織内の鼠=潜入者に限定して考えても、やはり「浅香の名前が知られていない?」という疑問にぶつかります。
特にバーボンはベルモット経由で波土の出す新曲に関して調査を要請されているのにもかかわらず、羽田浩司事件に組織が関わっていることを把握していないことからみても浅香についてはトップシークレット扱いであると考えられます。
一方、潜入者ではないシェリーは組織が血眼になって行方を探していました。
裏切り者とは言いがたい段階のキールすら人員を割いて捜索されていたことや、沼淵の処遇を検討していたことからも、組織からの離脱者への監視は相当厳しいものであると考えられます。
シェリーはAPTX4869についてよく知る人物であり、浅香が若狭だとして、彼女が潜入者かどうかは別にしても組織の裏切り者ならシェリーと大して立場は変わらないことになります。
強いて言えば、浅香について知られていないのは羽田浩司事件について隠したいことがあるからかもしれない、という程度です。
それでも組織内の噂を止めることは難しいと考えられます。
ラムについて左右どちらかの目が義眼であることは広まっていますし、コードネーム持ちの人間について一切の情報を隠すのは困難でしょう。
やはり、組織員ではなかったのでほとんどの構成員に知られていないと考えた方が自然ではないでしょうか。
どうして危機感を感じさせたのか
若狭=浅香という前提にはなりますが、若狭はラムを誘き寄せようとしている可能性が高いです。
そうでなくともラム(組織)は羽田浩司事件やAPTX4869について知っている浅香が動いているのならどうにかしたいと考えるのが当然です。
若狭が手に入れている「APTX4869が投与された人物名のリスト」は暗殺の証拠であり、組織の研究に関わるため、見過ごすことはできません。
どのみち灰原の周辺にラムが現れることは避けられないわけで、若狭のラムに対する殺意(?)=組織の匂い=危機感と考えられます。
毒薬
95巻では若狭がAPTX4869を飲まされた人物名のリストのデータを手に入れていると判明しています。
若狭がAPTX4869を「あの毒薬」と称しているということは、本来の研究目的については把握している場合と把握していない可能性があります。
死亡者がいる以上、毒薬であることは間違いないのですが、前述の通り、エレーナは宮野厚司の研究を応援をしていました。
灰原は「毒なんて作っているつもりはなかった」と言っていて、未完成品の副産物として体内に残らない毒性が暗殺の道具として組織に利用され、APTX4869を飲まされた新一は偶発的に幼児化しました。
99巻で、ベルモットはメアリーにAPTX4869を飲ませた際に「自分の妹が作った毒薬でこの世を去る気分はどうか」と言っています。
このことから、灰原が焼け残った資料で「復活」させたと言っていた通り、17年前と同じ毒性を持っていたことがわかります。
しかし、19年前〜17年前にベルモットが不老になっていたのだとしたら19年前に作られたAPTX4869の効果は本来の研究目的と違うのではないでしょうか。
ピスコは「ここまで進めていたとは」「亡くなったご両親もさぞかしお喜びだろう」と幼児化について評価しています。
ピスコは「生前の宮野夫妻ととても親しかったので開発中の薬のことはよく聞かされていた」と灰原に話していました。
また、幼児化した灰原を瞬時にシェリーと判断できたことからみても、薬のことをよく知っているのは確かです。
したがって、評価していたのは成長ではなく、幼児化現象(年齢低下)の方であると考えられます。
ベルモットが幼児化に気づき、シェリーを亡き者にしようとしていたことからみても、灰原は両親以上に研究目的の完成型に近づいていたことがわかります。
もしも本来の研究目的が「若返り」なのであれば、その効果が強力だと「死亡」で、体内に残らない毒性=体のメカニズムということではないでしょうか。
「幼児化」は適した年齢にはあたらないものの、薬の研究目的が若返りなのであればその目的に近づいていることになります。
78巻で灰原は「私わかってなかった」「こんな薬作っちゃいけなかった」と後悔していました。
その一方で「でもみんなを巻き添えにしないためにも今はこの薬に頼るしか…」と薬を手にしています。
組織が自分を追って列車内にいるのでその「毒薬」を頼ろうとしていた=自ら命を断つつもりであったのではないでしょうか。
つまり、手にしていたのは「APTX4869」で、後悔していたのは結果的に毒薬として使われて何人も殺害されたからだと考えられます(※78巻「ミステリートレイン〔交差〕の扉絵に描かれているのはAPTX4869)
以前の記事でも書いたのですが、改めて上記を書いているのは今後もまた同じ選択をする可能性が高まってきたからです。
95巻で、若狭は新一が目撃されたというSNS情報を知って、灰原に「あなたが住んでる阿笠博士さんの家の隣って『工藤』ってお宅よね?」「会った事ある? その家の息子さんの新一君に…」と尋ねています。
この発言から若狭が新一の素性について調べたことがあるとわかります。
リストを手に入れた後、世良やメアリーのように全英オープンの映像を見たのであれば、メアリーと同様に搭乗者名簿(※江戸川コナンのパスポートは存在しない)のところで引っかかるはずなので、若狭の場合はおそらく日本国内で「キッドキラー」として報じられていたのがコナンを知った理由ではないでしょうか(若狭が初めて登場した回の一つ前の話がキッドが登場した木神シリーズです)
調査の上で新一の幼児期の顔を知っていて、コナンと新一が同一人物だと推理していた若狭はSNS情報について「工藤新一のわけがない」(=幼児化現象をこの時点では疑っていない)とリストを見ながら笑い、後日灰原に念のため確認したと考えられます。
今回(FILE1070)の話によって、若狭はこれまで灰原が宮野志保だとは考えもしなかったことが確定しました。
つまり、新一について尋ねた時は灰原が隣人だからという理由しかなかったことになります。
その後、服部が取材でニュース映像の人物は別人(沖田)であると世間に証言したので若狭もとりあえず納得していたと思います。
ところが今後、灰原が宮野志保の幼児化した姿だと確信した場合、若狭は娘も研究者であることを知ってAPTX4869を手に入れようとするのではないでしょうか。
若狭は相当腕の立つ人物ですが、95巻でわかるように上半身には多くの傷跡が残っています。
もしもその傷をつけたのがラムなのであれば実力は若狭以上ということになり、ラムを超える(復讐する)ために「毒薬」を手に入れようと画策すると考えられます。
しかも、体内に証拠が残らないAPTX4869を使えば17年前の事件と全く同じやり口で復讐ができるわけです。
寿司
教室で待つ同級生が「お寿司を頼もうか」と言っています。
まさかの脇田と若狭が鉢合わせは色々とまずそうですね。
脇田が若狭の新聞記事を見た上で対処を保留している場合、自ら乗り込んできたりはしないかもしれません。
安室がラムの依頼に対して何と回答したかは不明ですが、少なくともベルモットの報告は「工藤優作をいつでも始末できる」というものでした。
直近で組織がFBIを誘き出して排除しようとしていたことを踏まえると、現在は小五郎周辺の調査が優先されるのではないでしょうか。
どのみち新一は危機的状況です。
もしも脇田が帝丹小学校に来るのであれば、メタ的にはまだ灰原と若狭とは会わない気がします。
しかし、コナンと若狭が一緒にいるところを目撃する可能性は捨てきれません。
現段階ではラムがコナンのことを疑っていない場合、教師と生徒の関係であると初めて知ることになります。
そうなると安室の動きは重要になるのではないでしょうか。
公安は若狭を怪しんでいて尚且つ新一の正体には気がついていない状態です。
ラムと公安、どちらが秘密に辿り着くのが先かでコナンや灰原の行く末が決まる気がします。
料理
机の上にあるのはサンドイッチと唐揚げだとかちょっとしたおかず。
同級生がコンビニなどで購入して用意しただけかもしれませんが、ポアロで注文したのではと一瞬考えました。
もしも若狭、脇田、安室が揃ったらカオスですね。
見てみたい気もします。
そういえば「不気味な牧場」(99巻)を読んだ時はまさか小林先生はともかく探偵団と脇田が接触することはないのではと思っていたのですが、早々に危うくなっていることになるのかもしれません。
暗号
3人の同級生の動揺ぶりを考えると何らかの秘密が隠されていそうですね。
しかし、タイムカプセルを埋めた暗号に告発文といったネガティブなものを仕組むとも思えません。
それにしても「襲」なんて小6で書くことあるのでしょうか。
明美が図書委員だったことに関係があるのかもしれません。
タイムカプセルには3人の夢を応援するようなメッセージが残されているのではないでしょうか。
・村田匠(元クラス委員長)/賞をとったという水彩画を描くときに着想を得たのがクロード・モネの作品なのかもしれません。フリーターをしているので、絵描きを目指さなかったことについて言われたみたいで驚いたのではないでしょうか。
・柳町岳(元副委員長)/念願叶ったと言っているので、消防士を目指すきっかけになることがあったのではないでしょうか。過去に火事から助け出されて、その時に持っていたお守りを今も持っているのかもしれません。
・市橋聖子(元書記)/医者になるのが親の希望でもあったと言っています。他に気になる職業があるか、理想と現実のギャップにぶつかって自分に嘘をついているのかもしれません。
名前
探偵団に「宮野志保」という名前を知られたことが気になりました。
以前、殺人事件を起こした犯人から山小屋に閉じ込められた際、突然現れた(=元の身体に戻った)宮野志保に探偵団は救出されています。
今後、灰原が第三者から宮野志保と間違えられた(合っていますが)ことを安室に知られる可能性はあるのでしょうか。
明美との写真の一つでも見られたり、顔を改まって見られたら気づくとは思います。