考察

組織関連考察③

公安の動き

85巻楠田陸道が自殺した際に使用した拳銃を入手。
86/87巻長野県警の黒田兵衛捜査一課長が啄木鳥会の事件が解決した後、警視庁捜査一課の管理官に就任。
92巻若狭が事件を起こしたプロゴルファーを撃退したニュース記事を黒田が目にする。
92巻後日、羽田浩司殺害事件と若狭留美について回想していた黒田は週末に若狭が少年探偵団と一緒にキャンプ場に行くと知り、キャンプ場で密かに若狭の様子を観察する。
95巻安室(バーボン/降谷零)はラムから工藤新一の情報を要求される。
95巻後日探偵事務所を訪ねた安室(バーボン/降谷零)は蘭に修学旅行先で事件を解決したのは工藤新一だと確認する。
95巻その日の夜、工藤邸に侵入を試みた安室(バーボン/降谷零)は自宅で待っていた優作たちと鉢合わせになり、何らかの話し合いをする。
96巻「大事」の前に事件を解決する手助けを黒田に指示され、安室(バーボン/降谷零)はコナンに事件に関する情報を与える。
96巻後日そのことを電話で報告した際、黒田に「報告を怠るなよ」と言われた安室(バーボン/降谷零)は工藤邸で優作たちと会ったことを思い出すが、詳細は不明(96巻)
尚、その話し合いの内容についてはコナン(新一)も把握していない(FILE1067/サンデー2021年1月27日発売)
97巻安室(バーボン/降谷零)と脇田(ラム)は急遽参加できなくなった園子と蘭の代わりに小五郎、コナンと共に長野への探偵調査旅行に同行。
廃教会で事件が起き、事件現場の映像を見た長野県警の諸伏高明警部は安室(バーボン/降谷零)が以前、学生時代に友人として弟の景光(スコッチ)が紹介した人物で、遺品を送ってきた主だと悟る。
黒田から高明宛に電話がかかってきて、高明はその後安室と対面した際には面識がないかのように振る舞う。
99巻安室はポアロにて、以前にスマホで隠し撮りした若狭の写真を何度も見ていた。
104巻黒田と若狭がチェスの試合会場で再び対面。
17年前当時、公安の黒田はアマンダと面会する予定があったが、一足先に組織から殺されてしまったアマンダと羽田浩司が死亡した現場を確認している。若狭(本名:レイチェル・浅香)を狙う組織から彼女を一時匿ったが、その際交通事故に遭い10年近く意識不明で警察病院に入院していた。なお、当初は黒田に殺人容疑がかけられていたが、遺体発見時のホテルの従業員による証言で疑いは晴れている。
コナンにアマンダが残したダイイングメッセージの謎が解けるかどうか相談した黒田は若狭が浅香ではないかと考え、ダイイングメッセージを解く上で17年前の事件について当時のことをコナンと情報を共有している。
若狭(浅香)が何か事を起こそうとしていると知り、コナンと共に行動していたが、それ以降の動きは不明。
105巻(予定)風見と共に東京駅を訪れた安室(降谷)はホームで風見と分かれ、一人で誰もいない新幹線の車両に移動。座席の荷物入れに置いてあったスマートフォンの電話に出ると、違う車両にいた怪しげな老人から「江戸川コナンを調べ上げろ」という指示を受ける。

公安が得ている情報

安室が今のところ「工藤新一=江戸川コナン」には気づいてない(気づいているのなら脇田が周辺にいるのに聞かれなければ話さない、コナンから情報を引き出そうとしないのは不自然)ことや黒田が若狭を単独で探っていることを踏まえると、かつての公安の捜査情報から若狭が気になる人物としてあがっているのかもしれません。

安室は若狭が偶然落とした駒を拾って「17年前の事件の犯人がまさかここにいるのか?」と考えているので若狭=浅香(?)だとは思っていなかったことがわかります。

※ほぼ確定したので(?)の部分を敢えて消しています。尚、他の記事も紛らわしいので消しています。

つまり、安室は公安としても組織としても羽田浩司事件について組織の関与は知らされていないと思われます。

以前からコナンの周辺を探っているのなら若狭が副担任になってからすぐに行動を起こすと思われますが、黒田はネットのニュース記事を読んだ時に副担任の存在を知り、それから気にし始めたので黒田個人が若狭の顔に見覚えがあると考えた方が自然です。

年齢差的に安室より情報を持っているであろう黒田が若狭を自ら観察しに行くほどなので、かつて捜査中に見かけたことがあるのかもしれません。

18年前の宮野夫妻が死亡した火災事故の現場で見かけた可能性も考えられます。

→追記。

FILE1103(サンデー2023年1月/2022年11月30日発売)にてかつてアマンダ・ヒューズに同行していた若狭(浅香)と黒田がすれ違ったことがあると判明しました。

上記の点から、黒田は若狭の顔に見覚えがあったため、プロゴルファー撃退のネット記事報道を見つけたからキャンプ場までわざわざ確かめにやってきたと確定しました。

FILE1070(サンデー2021年20号/2021年4月14日発売)で若狭は宮野エレーナを知っていることが判明しました。

ラムの調査依頼

FILE1060「ショーはこれから」(サンデー2020年39号/2020年8月26日発売)で、ベルモットはラムの依頼で優作が日本に留まる理由を探っていたことが判明しました。

一方、ジンやウォッカには事情は聞かされていませんでした。

工藤新一にAPTX4869を投与した件に関わっていたジンとウォッカは工藤家の調査にこれまで同行させられなかったのかもしれません。

新一の調査を命じられてるのがバーボンなのは単に探り屋だからなのではなく、ジンとウォッカが当事者なので保身のために小細工できないよう秘密裏に調査していると考えられます。

その点、シェリー脱走については特異すぎる状況で組織員を疑いようにもどういうカラクリか不明なことやジンが報告を怠っていないので信用されているというところではないでしょうか。

そのため、ジンはラムがどこで何をやっているのか聞かされているのだと思われます。

波土禄道(およびアサカという曲)の調査の際、安室が約束を守るか気になってベルモットはコナンと蘭に接近していますが、元々調査依頼を受けたのは探り屋のバーボンです。

変装が必要であればベルモット、そうでなければバーボンという振り分け方だと考えられます。

安室の動き

公安側からすれば、ラムが動き出したこの機会に乗じて確実に釣っておきたいというところではないでしょうか。

できればその前にシェリーの確保をしたいのかもしれません。

来葉峠の一件のトリックを見抜いた後、現在は再びシェリーの行方に関する手がかりを探しているのだと考えられます。

その証左として94巻「灰原の機嫌」で安室が阿笠邸の付近を見張っていことが挙げられます。

暗に離れるよう躱されてしまったのでコナンたちのストラップ探しに同行していますが(灰原の機嫌をとってAPTX4869の解毒薬を得て修学旅行に行くために)ストラップ探しに懸命なコナンにも関心を持っています。

「でも意外だったよ…友達が落としたストラップの為に君がこんなに必死になるとは…」

94巻「ただのじゃないもん!」

「強いのは…」(99巻)の牧場では灰原についてコナンに探りを入れていました。

「その灰原哀って子…以前どこかで会った気がするんだけど…」

FILE1054「強いのは…」

78巻のミステリートレインでの妨害や前述94巻の灰原のストラップを探す回で阿笠邸から遠ざけようとしたことからみてもコナンがFBIと結託してシェリーを隠していると考えているのではないでしょうか。

遡って根拠を挙げてみます。

  • 76巻「探偵たちの夜想曲」では蘭から阿笠博士の名前を聞いて反応していました。
  • 同じく76巻「高木刑事からの贈り物」では「せっかく噂の阿笠博士に会えると思ったのに」と残念がっています。
  • 小五郎から「阿笠博士の車で警視庁にパンフレットの撮影をしに行く」と聞いた上で警視庁に来ていることからみても別の用はさておき、目的があった(事情聴取は口実である)ことがわかります。
  • 77巻「自分の領分」ではコナンたちの行くキャンプに興味を示し、蘭と世良の電話の中で阿笠博士の名前が出ているのをしっかり聞いています。
  • 同じく77巻「灯下の孤影」では毛利探偵事務所に忍び込んで、小五郎のパソコンに届いたムービーからシェリーの姿を見つけました。

一連の行動から阿笠博士とシェリーに何らかの関係があると考えていたことがわかります。

そう考えたのは生前の宮野夫妻と阿笠博士が顔見知りであることを知っているからではないでしょうか。

39巻では阿笠博士が発明品の発表会で2、3度宮野夫妻と会ったことがあると判明しています。

この時、阿笠博士はコナンの「学会から追放されたマッドサイエンティストを知ってんのか!?」という驚きに対して「マッドサイテンティスト? 気さくで感じのいい男じゃったぞ…」「ワシの発明品も気に入ってくれとったし…」と話していました。

「無口で何を考えているかわからなかったのは、彼の奥さんの方じゃったよ…」「確か名前はエレーナとか言ったかのぉ…」

「エレーナって、奥さん外国人かよ!?」

「ああ…。彼女がイギリスから日本に留学している時に知り合ったそうじゃ…」

39巻

さらに、阿笠博士は宮野厚司が友人に貸し出している実家を訪ねて、事件に遭遇しています(41巻)

尚、この実家は生前の宮野明美が訪ねた場所でもあり、組織は家探しと盗聴をしていました。

78巻では「眠りの小五郎」の裏で糸を引いているコナンに関心を持つようになっています。

80巻では探偵団に誘われたものの、理由をつけて阿笠邸に入ることはありませんでした。

尚、この時点ではFBIが工藤邸にいることを知りません(85巻「緋色の疑惑」にてベルモットから居場所を掴んでいるのかと聞かれた時に「いや…それはまだですが…」と話している)

阿笠博士に関心はあるものの、ベルツリー急行で爆破が起きた後でもあり、考えがまとまらないままいたずらに接近することは憚られたということだと思われます。

94巻でも阿笠邸を見張っているのみです。

82巻では80巻でクール便の犯人から探偵団を助けた時のことを指し「君達もう一人いたよね」と灰原の存在を認識していることがわかります。

一方で、99巻「強いのは」で歩美とコナンの会話を聞いていた安室は「その灰原哀って子…以前どこかで会った気がするんだけど…」と言っています。

少々焦ったコナンは「冷凍コンテナに閉じ込められていたのを助けられた時」だと説明しました。

しかし、前述の通り安室は顔を見ていないまでも、灰原がいたことをすでに認識しています。

「あの時あの子もいたのか…。いつも帽子を目深に被ってるからシャイな子だなぁと思ったけど…」と返しました。

たしかに、牧場に向かうバスの中で接近した時も灰原は帽子を目深に被っています。

「シャイな子」であればそれで納得するところをわざわざ尋ねるということは「いつも帽子を目深に被っている少女」=「灰原哀」だと確認するためにカマをかけたと考えられます。

総合すると、安室はパンフレットの撮影のために警視庁に来ることはなかった「灰原」が阿笠博士と行動を共にしていて、尚且つコナンが信頼する人物で自分を避けているという情報を手に入れたことになります。

一見ただの小学生が犯罪に巻き込まれているのにコナンは灰原のことを「抜け目ない」と評価してそれほど心配していないというのは傍目には不自然です。

コナンがドジを装っている若狭を信用していないにしても、せいぜい引率者の大人がいるから何とかなるだろうと言うのが妥当なところではないでしょうか。

小五郎のことはすでに調査済みの安室の立場でシェリーが生きていると仮定したら誰が匿っているのかは消去法で見当がつくと思います。

FBIがシェリーを直接匿うなら日本でコナンやFBIがこそこそする理由はありません。

FBIが変装するだけならどこか適当な場所を住まいにしてもノーリスクです。

わざわざ阿笠博士宅の隣に住む理由は本来ならありません。

(95巻で)新一について調べるために工藤邸に侵入して何があったのか不明ですが、幼児化についてすぐには思い至らなくとも「江戸川コナンが工藤新一、灰原哀が宮野志保の幼児化した姿」だと気づくフラグが着実に立っていると考えられます。

ベルツリー急行で宮野志保(の姿のキッド)と対面していて灰原ともニアミスしたことがネックですが、その点については新一が生存していると蘭に確認がとれていることがヒントになるのではないでしょうか。

組織の研究内容(灰原が未完成品の毒薬にとどまらず、これまで以上に進めていたこと)と未解決の羽田浩司殺害事件の真相、この両方を公安が手に入れる機会でもあります。

(99巻FILE1058〜100巻収録のFILE1060にて)ベルモットはコナンとキッドの関わりをミステリートレインの一件(78巻)で知り、二人の関係性を利用して優作に扮したキッドに成りすましました。

今後キッドと安室が関わる機会があれば、ベルモット同様にキッドとコナンに関わりがあること、さらにラムからベルモットへの調査依頼の存在について安室が把握していた場合はベルツリー急行で出会ったのが宮野志保に扮したキッドだと知ることになるのではないでしょうか。

→追記。FILE1078(サンデー2021年36・37合併号/2021年8月4日発売)にてキッドと安室の邂逅がありました。

安室は「君のその感じ…どこかで会った気がするんだが…」と話していましたが、キッドは「さぁ…覚えてねぇな…」とはぐらかします。

安室の携帯にある若狭の写真

「不気味な牧場」(99巻)で、光彦とメテオハンターのトラブルの仲裁に入る前に若狭を隠し撮りしていたのだと思われます。

黒田は92巻「真っ白な気持ち」93巻「ティップオフ」で若狭の顔に見覚えがあるようでした。

黒田が若狭に目をつけた理由は不明ですが、安室は風見を助けに向かう道中、偶然居合わせたのに撮影しているということはすでに黒田から何らかの情報共有があったのかもしれません。

安室が得ている情報

APTX4869を飲まされた人物リストが流出している(若狭が手に入れている)ことをバーボンとして知ることができたと仮定した場合、それをやったのは誰かという疑問は生じます。

組織の見解にしろ公安の見解にしろ、浅香が重要人物になっているはずですが、安室と黒田は若狭を観察するだけに留めています。

バーボンが若狭の動向を探るよう組織(あるいはラム個人)に命じられたのなら警戒していると思われますが、そういう様子がなかったことからみても、安室には黒田からコナンのクラスの副担任の存在が伝えられている程度かもしれません。

安室自身で写真を撮って見ているのは黒田から得ている情報が最低限で、若狭が何者なのか気にしているからだと考えられます。

「強いのは…」(99巻)では状況的に消去法で若狭しか駒の持ち主はいないわけで、17年前の事件の関係者かもしれない人物について情報を遮断している理由が知りたいのではないでしょうか。

何度も写真を見ているようなので、公安の情報で顔を見たことがあるか思い出そうとしているのだと考えられます。

黒田あるいは安室視点ではコナンはなぜか組織のことを知っている人物なので、その周辺人物のことが気になるのもおかしくはありません。

しかし、一見すると若狭は小林先生と大して立場は変わりませんし、コナンが事件解決に役立っていることはすでに周知の事実なので新聞記事に不審な点はありません。

黒田の見ていた資料

93巻「ティップオフ」で黒田はパソコンで羽田浩司殺害事件の記事を見ていました。

この記事は89巻「握られたハサミ」でコナンたちが見ていたインターネット記事と同じだと思われます。

尚、この記事は角行の駒についての記載がされていないため、99巻「ドジと疑惑」で安室が回想していた公安の研修資料とは別であることがわかります。

削除しているのは誰なのか

89巻「握られたハサミ」では阿笠博士とコナンでこんなやりとりをしています。

「それにしてもこんな情報よく見つけられたのォ…」

誰かが定期的にネットにアップしてるみてーだぜ? 削除されるのをお構いなしに…」

さらに90巻では「あの事件のサイトは削除されたっきりしばらくアップされてねぇし…」とコナンが考えています。

98巻では「まあオレは今それどころじゃなく…太閤名人の羽田家を調べなきゃならねぇんだけど今、将棋で検索したら大抵このニュース(八百長疑惑で失踪中だった棋士が遺体で発見された事件)ばっかひっかかるんだよな…」とコナンが考えています。

つまり、コナンがサイトを見たのは灰原から羽田浩司の話を聞いてから少なくとも2回以上、あるいはネット上で度々掲載されているという情報(噂)を見つけたと考えられます。

黒田はコナンがサイトを見つけられなかった後、再度アップされたサイトを見たのではないでしょうか。

そして、再びサイトは削除されたと考えられます。

コナンが羽田浩司事件についてどこまで知っていたのか89巻を振り返ると

「あなた知ってる? 羽田浩司…」

という灰原の問いに

「ああ! 七冠王に一番近いと期待されてた天才棋士だったけど…趣味でやってたチェスの大会に出場する為に渡米してて…その最中何かの事件に巻き込まれて亡くなったんだよな? 苗字が同じ羽田だったから親戚かもって思ってたけど…まさか太閤名人の義理の兄さんだったとは…」

とコナンは答えています。

一方、ネットの情報では

「羽田浩司…今から17年前…当時将棋の四冠王だった彼はその冠を携えて趣味にしていたチェスの大会に参加すべく渡米したが…その大会前夜宿泊していたホテルの部屋で何者かに襲われて死亡…」

「部屋はかなり荒らされていて…殺される際、羽田も抵抗したようだが直接の死因は不明…」

「同日、同じホテルの別の部屋で亡くなっていたアメリカの資産家、アマンダ・ヒューズの死因もわかっておらず…」

「アマンダが羽田の大ファンで交流があった事や…その日以来、アマンダが帯同していたボディーガードが姿を消している事から…アマンダが「浅香」と呼んでいたボディーガードを最重要容疑者として行方を追っているが…その消息はつかめていない…」

「なお、その「浅香」という人物の身元は謎に包まれていて…アマンダの家族や関係者もアマンダがその人物を雇い入れた経緯を知る者はいないらしい…」

と、以降も事件の詳細が記載されています。

ネットの羽田浩司事件に関する記事とコナンが持っていた認識の相違点

コナン→何かの事件に巻き込まれた

サイト→何者かに襲われて死亡

「何者かに襲われて死亡」の部分以降の情報は全てサイトでしか得られない情報と考えた方が自然です。

灰原や阿笠博士との会話内容からも事件の詳細について初耳であることが窺えます。

また、17年前の事件のため、新一は当時の公的な記事しか知らなかったと思われます。

有名人の棋士が死亡して未解決事件なのであれば当時センセーショナルに取り上げられる可能性が高いのに不足した情報が長く(17年間)残っているのは「未解決の公安案件」だからではないでしょうか。

角の駒についてはコナンが灰原から羽田浩司について知っているか尋ねられた時やサイトを見ても触れていない、若狭の衣服の後ろポケットに入った将棋の駒について瞬時に気づかなかった様子からも、世間には公表されていないと考えられます。

サイトを削除しているのはおそらく組織だと思われます。

別の記事でも書きましたが、ネットにアップされた羽田浩司事件の資料とAPTX4869リスト流出を把握したラムが動き出したと考えています。

99巻で若狭が偶然落とした角行の駒を拾った安室は風見とのやりとりの中で、羽田浩司事件について回想していました。

「さっきから何を…?」

「将棋の駒だよ…左下に傷がついたこの角の駒…以前どこかで見たような気がして…」

「将棋っていえば羽田秀𠮷名人…またタイトルを防衛して六冠維持! スゴイですよね!!」

(羽田!!)

(17年前アメリカで謎の死を遂げた…天才棋士羽田浩司! あの事件の後、彼の所持品で唯一紛失したのが…彼が御守りとして肌身離さず持っていた角の駒…)

(公安の研修で未解決の難事件として見せられた資料には…その角は、彼が初めて将棋の師匠に勝った対局で最後に指した駒で…彼の遺族が言うには「息子がその駒を手離すわけがない! それを持っているのは息子を殺した犯人しかありえない」と…)

(この角はあの時に見た駒の写真に傷の形状も文字の形も酷似している…まさかとは思うが…いるのか? この牧場に…羽田浩司を殺した殺人犯が…)

99巻

この回想で以下の二点がはっきりしています。

  • 組織内でも羽田浩司の死に組織が関与したことは実行部隊の中ではトップシークレット扱いであること(ラム以外はせいぜいジンとウォッカが知っている程度だと思われる。シェリーは特別ではないでしょうか)
  • 安室は公安としても黒田から何も知らされていない(=公安は組織の関与を知らない?)

羽田浩司は棋士として有名で、世間には公表されていませんが、大金持ちの御曹司です。

しかし、羽田浩司の遺族(親)が犯人に心当たりがなく、未解決事件のままであることや組織が羽田家に手を出していない(例:秀𠮷は養子になり、棋士として活動できている)ことから羽田家と組織には関わりがないことがわかります。

具体的な証左として、90巻で組織が羽田浩司殺害事件について世間に新情報を出すつもりだった堀田凱人を始末しようとしていたことや「アサカ」という曲名を発表した波土についてのバーボンへの調査要請が挙げられます。

対応の差があるのは羽田家には容易に手出しできないともとれますが、それも結局は組織と羽田家に関わりがないことを意味しています。

堀田凱人に情報を与えた人物

90巻ではメアリーと世良が羽田浩司事件について以下のやりとりをしていました。

「で? 堀田が入手した情報は何かわかったか?」

「連行される前に古栗って人が言ってたよ…姿を消したボディーガードの浅香があの手鏡を持ってる所を見た人がいて…浅香は女だって事を堀田がつかんだみたいだって…羽田浩司の霊を呼び出して『女だ〜っ 女に殺されるー』って叫ぶつもりだったってね!」

「そんな事か…くだらん」

堀田に情報を与えたのは浅香本人(若狭)ではないでしょうか。

堀田凱人はこれまでお金と人を使って事前に調査していましたが、それがマスコミに知られて世間の信用を失っていました。

小五郎が依頼を受けたテレビ企画自体は犯人が復讐のために仕組んだもので、前述の通り、浅香を目撃した人物がいたという情報を堀田が掴んだことには無関係です。

有名人が殺害された事件に関係する情報を持っていたとして、果たして捜査機関や報道機関ではなく胡散臭い人間に情報提供するでしょうか。

すでに世間の信用を失っていた堀田が高額な報酬を用意できたとは考えにくく、情報提供者にもこれといったメリットはないと考えられます。

しかし、その情報を提供したのが浅香(若狭)本人であった場合はどうでしょうか。

91巻、92巻で若狭はコナンが事件の捜査ができる(推理力がある)か確かめるために、事前に調べた上でコナンを事件に巻き込もうと仕組んでいたとみられています。※これについては別の考察で。

振り返ると「霊魂探偵」事件(90巻)にも意図があったと考えられます。

浅香の情報を提供することで、堀田がセンセーショナルに新情報を公表しようとすれば組織(ラム)の目に留まるというねらいがあったのではないでしょうか。

少なくともジンとウォッカは堀田に目をつけていたことからも、古栗が事件を起こさなければ堀田の付近に組織がやってきた可能性が高いです。

結局は古栗の行動により警察が介入し、浅香の情報は公開されませんでした。

堀田が死亡したことで手を引いた組織の行方も掴めなくなってしまったため、浅香(若狭)は帝丹小学校に勤務の上コナンに接触し、事件を起こしそうなプロゴルファーに目をつけたというところだと思います。


浅香本人が堀田に情報を提供していたとしたら、同じホテルに宿泊していたメアリーと世良は浅香とは仲間ではないと考えられます。

※世良は小五郎から事件について話を聞かされるまで堀田が宿泊していることを知りませんでした。

スタンスの違い

  • 浅香(若狭)→組織を追っているとすれば、行方がわからないので報道を利用して誘き出そうとしていると考えられる。
  • メアリー→組織に見つからないよう、元の身体に戻るまでは反撃できず、隠れ住んでいる。
  • ※ほかにも、世良は灰原哀がコナンと同様幼児化した姿だとあたりをつけていたが、若狭は後にその可能性を考えていたものの確信には至っていないという点も違いがあります。

江戸川コナンが工藤新一の幼児化した姿だとメアリー(と世良)が考えたのは全英オープンの映像を見たからでした(99巻)

その時点でメアリー自身が幼児化しているため、協力者がいるのなら常に連携をとっておかないといけない状態なのに「霊魂探偵」事件の時点で一切情報共有をしていないことになると思われます。

つまり、メアリーが若狭に情報をもたらした可能性は低いです。

宮野エレーナやAPTX4869について知っている若狭は、独自の調査をしている立場と考えた方が自然ではないでしょうか。

プロゴルファー撃退を報道させた上に自分の名前と顔、職業まで知らせることができて、ラムは深入りはせずとも帝丹小学校に現れました(→FILE1072/サンデー2021年21号/2021年4月21日発売)

ついに、狙い通りとなりつつあります。